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- 「環境省 生物多様性センター」訪問 —もっと知って欲しい大切なこと—
河口湖から富士山五合目へ伸びる富士スバルラインを走ること数分。富士の裾野に広がる森の中に「環境省 生物多様性センター」があります。取材に訪れたのは3月上旬でしたが、周囲に広がるアカマツの林にはまだ雪が残り、都会とは全く異なる大自然を感じることができました。
「生物多様性については環境省だけがやっているものと思われがちですが、現在は各省庁が独自の施策を進めています。その数は660に及び、文字通り国を挙げて取り組んでいるのが現状です」、また「もちろん国だけではなく、地方自治体や民間の参加も必要です。それぞれの地域によって必要な対策は異なってきますから」と、中島尚子さん(環境省自然環境局)は、生物多様性への国、地方自治体の取り組みから話しはじめられました。
確かに日本は、北海道から沖縄まで多様な生態系があり、トップダウンで個々の地域が抱えている課題を全て解決できるはずもありません。身近な自然に対する問題意識の中から、その地域にふさわしい施策を行っていく必要があるのでしょう。
中島さんの話で印象に残ったのが、生物多様性が文化にも影響を与えるということ。「全国各地の名産品なども多様な生物相があってのものではないでしょうか」子どもの頃はお腹いっぱい食べられた故郷の名物が、今では高級品になってしまった例は多いし、もし稲が絶滅したら日本酒の文化は消え去ってしまうかもしれません。
一方で、「生物多様性」の知名度が低いという悩みもその一つ。「非常に抽象的な言葉であるせいか、日常生活に直接悪影響をもたらす公害のように、一般の人が危機感を抱きにくい」また、「生物多様性の認知度を50%に上げる」という目標が掲げられているとか。「まずは広く話題にしてほしいですね。人々の間で生物多様性について議論を重ねていくことが必要です。もちろん批判の意見もあっていいと思います」
地球温暖化の問題も、1997年のCOP3(地球温暖化防止京都会議)をきっかけに、10年をかけてCO2削減やリサイクルの必要性が一般に浸透してきました。一方、2010年には生物多様性条約のCOP10が名古屋で開催されることとなっており、生物多様性への取り組みはこれから本格化していくと言えそうです。
「自分も何かやってみたい」と考えている人にに向け、過去には「身近な生きもの調査」という調査を数回にわたり行っています。これは生物多様性センターが「自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)」の一環として行っている市民参加型調査。全国の自然愛好家の協力を得て、「環境指標生物」となる身近な動植物(ツバメ、ひっつきむし、セミのぬけがら等)の分布や生態について調査を実施しました。2000〜2001年にかけて行われた「身近な林」をテーマにした調査では、参加者数が25000名を越えました。
また今年の7月からは、楽しくてだれもが気軽に参加できる、地球温暖化の影響しらべ「いきものみっけ」を行います。参加方法は季節ごとのテーマであるいきものや自然現象をみつけて、ウェブサイトや携帯電話、郵便などで調査報告を送ってもらうだけ。集まった情報はウェブサイトなどを通じて公開されます。この「いきものみっけ」で気づいたいきものからの小さなメッセージは、きっと、ひとりひとりの「くらしかた」を見直すきっかけになることでしょう。ぜひみなさんも参加してみてください。