「こんな実験、うまく行くわけがない」
超心理学の実験を不成功に導くのは
超能力を信じない懐疑論者の意思の力か?
超能力の研究を行う超心理学者たちは、透視や予知について実験を行う際、人間が五感を越えた何らかの能力を持っていると仮定するなら、この実験手法で偶然とは考えられないレベルで有意な結果が出た場合、超能力が実在する証拠となるはず、という理論立てを行っています。実験は厳密にデザインされ、どんな不正も入り込まないように対策を練り、実験についての情報も公開し、懐疑論者(超能力を認めない人々)からの批判に備えています。
超能力の実験は、人の心理に大きく関わってくるものなので、良い結果が出る場合と失敗に終わる場合の差が激しいという特徴があります。これが自然科学の実験であれば、同じ条件で同じやり方で実験すれば、同じ結果が得られるというわかりやすさがあります。しかし超能力の実験は全く同じ実験者が同じ条件で行っても、違う結果が出てしまう難しさがあります。ではなぜうまく行く時と行かない時があるのでしょうか。
ひとつの考え方として、超能力など一切認めないという意識が邪魔をしているという説があります。そんな馬鹿な、と思う人もいるかもしれませんが、そもそもの超心理学者の前提を思い出してみてください。「人間が五感を越えた何らかの能力を持っている」ならば、実験を邪魔する方向でその能力が働いていてもおかしくありません。また超能力研究に理解を示す人たちだけで実験を行うと良い結果が出る傾向にあるのに対し、一人でも疑い深い人が混じっていると、良くない結果が出るということがあるようです。「それは実験する側の被害妄想では」という意見もあるでしょうが、ではこういう例はどうでしょうか。
職場で、あるプロジェクトのために、社員が数名集められたとします。会社からは非常に難しい課題をクリアするよう要求されています。「そんなことできるはずがないじゃないか」とメンバーの誰もが口をそろえます。実際、簡単にできるものではありません。しかし、そこでふんばってメンバー全員が心をひとつにして努力を重ねた結果、無理だろうと思われていたプロジェクトが成功できた。同じ目標に向かって、心をひとつにすると成功できる……誰でもこのような経験はあるのではないでしょうか。こうした現象を、強く願う意識が現実を変える影響力を持ったと説明することはできないでしょうか。
逆にメンバーの意識がバラバラでひとつにまとまらず、プロジェクトが失敗に終わった時、おそらく誰か一人が「最初からうまく行くはずがないと思ってたよ、オレ」と言い出します。その人の意識が成功を阻んだと考えることはできないでしょうか。
何かを成し遂げるには強い意志が必要ということを否定する人はいないでしょう。しかしそれは、そのために努力し続けるだけではなく、成功を引き寄せてしまう能力のことを意味しているのかもしれません。