2016-3-1 UPDATE

達人の妙技と超能力

厳しい鍛錬の末に会得した達人の能力と
メカニズムも不明な超能力の差は何か。
理屈さえ付けられれば、人は納得するのか?

世の中には「達人」と呼ばれる人たちがいます。例えば武道の世界で、その道を究めたような人は、人間技とは思えない技量を身につけています。スポーツの世界も同様で、「ここぞ!」という時に鮮やかな活躍を見せる選手は、運さえも味方につけているようです。またモノ作りの世界でも、「あの人にしかできない」と周囲から一目置かれるほどの熟練者がいます。普通の人、並の技量の者から見れば、あり得ないほどの高い能力を発揮する達人たちが存在することは間違いありません。では、彼らを超能力者と呼ぶことは間違っているでしょうか?

おそらく「そんな失礼なことを言うな!」という反応が返ってくると思いますが、それはなぜでしょうか。達人の高いスキルも超能力も、常人には持ち得ないものに違いありません。なのに片方は賞賛され、片方はインチキ臭いものと思われるのか。それは、その能力を実現しているメカニズムの有無にあるのではないでしょうか。

達人と呼ばれる人は、生まれ持った素質もあるでしょうが、厳しいトレーニングによって、自分の感覚能力と身体能力を磨いていった結果、その能力を会得したと理解できます。一方でテレパシーや予知能力は、未だ知られざる知覚能力が拡張された結果だと超心理学者は予想しているものの、そのメカニズムは全く分かっていません。その分からなさが、超能力というものへの不信感につながっているのでしょう。でも、細かい原理は理解できなくとも、それらしい理屈で説明されると、とりあえず受け入れてしまうことってないでしょうか?

UFOは「異星人の宇宙船」という説も、確かな証拠は無いのですが、すっかり定着しています。未確認飛行物体である以上、本来なら正体不明のはずが、宇宙船という理屈を得たことで、人々の思考の中に落ち着き先を見つけることができました。テレパシーや予知も、人間の脳内の未知の器官だったり、時間を越えて伝わる特定の波長だったり、実証はできなくても「それらしい仮説」とセットになれば、すんなり受け入れられるのかもしれません。

理屈と需要という意味では、巷にあふれる健康食品や健康法のCMも似たようなものでしょう。「なんとかイオン」や「なんとか磁気」によってみるみる健康になる……というTVや雑誌でよく見かけるものです。こうした広告の「科学的」説明が本当に正しいのかどうかははっきり言って分かりません。しかし、受け取る側はそれに納得してお金を払ってしまうのです。社会的に認められてしまいます。

では本流とされる自然科学では、あやふやな理屈がまかり通っていないのでしょうか? ほんの100年前には、世界中の物理学者は「光はエーテルという物質を通じて伝わる」と信じていました。