2016-3-1 UPDATE

幽霊はなぜ怖いのか?

「恨めしや〜」と化けて出る幽霊。
死んだ人間が現世に現れることを
そもそもなぜ、怖いと感じるのだろうか。

夏になるとテレビでは定番の「幽霊もの」の番組を放送します。幽霊が出ると噂になっている心霊スポットを紹介したり、怪談話を放送したり、番組に出ているタレントは「怖い、怖い」を連発します。この手の話が大嫌いな人は、「怖いから見ない」とチャンネルを変えるか、別の部屋に逃げるかもしれません。

さて、ここで素朴な疑問ですが、幽霊はなぜ怖いのでしょうか。

「幽霊は怖いに決まってる。だって死んだ人が目の前に現れるんだから」

亡くなった人が自然の摂理に反して、立ち現れるのは確かに驚きです。しかし、そのことに対し、「怖い」以外の反応もあって良いのではないでしょうか。「珍しいから、もっと見たい」と思ってもよさそうです。

「幽霊は恨みがあるから化けて出てくる。だから怖い。早く成仏してほしい」

なるほど、幽霊自体というよりも、幽霊の目的(?)の方が怖いという意見ですね。さらに成仏という言葉が出てきました。多くの日本人の宗教観として、人は死後、その魂が極楽へ行って仏様になるというイメージがあります。でも、この世に未練がある場合は、極楽に行かず、現世に止まるとされます。しかも未練とは、たいていは自分が死ななければならない原因を作った者への恨みだったりします。確かに幽霊の決まり文句は「恨めしや〜」でしたね。

なぜ幽霊が怖いのかを考えてみたら、結構複雑な説明になってしまいました。これがすんなり理解できるのは、日本独自の宗教的・文化的背景がないと難しいように思います。では、日本以外の、他の宗教的伝統がある文化圏ではどうなのだろうと考えてみたくなりますが、そもそも「幽霊」という概念は人類共通なのでしょうか?

もうひとつ亡くなった人と出会うシチュエーションとして、「夢枕に立つ」というものがあります。たいていの場合、両親や兄弟など近しい親族が夢の中に現れて、何事が告げるというパターンです。このケースでは、「怖い」という反応とは無縁のようです。むしろ、会いたくても会えなかった人と再び会えた喜びの方が勝るイメージでしょうか。さらには夢の中で、生き方だったり、人生の指針だったりを教えてもらうことで、夢から覚めた朝に「ありがたい経験をした」と感謝することもあります。亡くなった人と出会う場所が、現世と夢の中で、その反応にかなり差があるようですが、これも文化的背景に関連しているのでしょう。