楽しく科学を学べて、人気のサイエンスショー。
その活動に取り組んでいる中学校の理科教師に
その難しさとやりがいを聞きました。
■サイエンスショーの魅力
みなさんは「サイエンスショー」を見たことがありますか? さわっても割れないシャボン玉、零下100度の世界の不思議、大気圧を体験する方法、ペットボトルから綿を作る方法などなど。身近な不思議を取り上げ、何故そうなるのかを、簡単に作れる実験器具を使って、講師と観客とがいっしょになって考えていく科学エンターテインメントは、子どもだけでなく大人も楽しめる内容です。サイエンスショーは全国の科学館や児童館で行われていて、「理科離れ」と言われる中、逆に楽しい科学の世界への入り口となっています。
「ショーを見てくれた全ての人に楽しんでほしい。幼児には幼児なりの、小学生には小学生なりの、大人には大人なりの楽しみ方があるはず」と語るのは、福井県坂井市立春江中学校の月僧秀弥先生。授業で理科を教えるかたわら、夏休みや週末を利用してサイエンスショーの活動に取り組んでいます。時には県外からオファーが来るほどの人気ぶりで、忙しい日々を送っています。「ショーでは、こうしたらどうなる? と観客に予想をしてもらいながら実験を進めていくのですが、ある時、一人の幼稚園児の予想が当たり、高校生や大人たちの予想が外れるということがありました。その瞬間、彼らのショーを見る目が変わり、真剣に見てくれるようになったのです」お子さんとサイエンスショーを見にいくなら、お父さんも真面目に見た方がいいようですね。
■北京公演、そして「科学の鉄人」で準優勝!
月僧先生がサイエンスショーに取り組むようになったのは、2000年に福井県立児童科学館「エンゼルランド」に異動になったのがきっかけ。サイエンスショーの担当になり、毎月新しい企画を考えなければならなくなり、しかもステージに立って自ら講師を務める必要もありました。
「書籍やホームページ、他で行われているショーを参考にとにかく勉強。思いついた実験は全てやってみて経験を積みました」
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全国で科学教育に取り組む先生たちのネットワークに加わって、互いに情報を共有したり、研究会にも参加。ベテランの先生たちのステージを参考に、自分なりの「見せる」テクニックも磨いていったそうです。そんな中で思いついたのが「音」をテーマにした実験「あれこれ音っと」。「音と振動」「音と空気」「音の高低=音階」を組み合わせた楽しいショーで、クライマックスでは長さが異なるアルミ棒を順番に床に落とし「キラキラ星」のメロディを奏でてみせます。2004年11月には、ソニーの招きで中国・北京を訪れ、この「あれこれ音っと」を披露。
「通訳をはさんでの説明だったので、うまく伝わるかなと心配でしたが、最後は大きな拍手をもらって大成功、本当にうれしかったです」その後も、少しずつ改良を重ねて完成度を高め、2006年2月に東京・科学技術館で開催された「科学の鉄人」に出場。月僧先生を含むサイエンスショーの名手9名が参加。
1対1で技倆を競い、観客の投票で勝者を決めるトーナメント方式で争われ、月僧先生は見事準優勝に輝きました。
■楽しんでもらえるから、がんばれる
「ショーを続けていられるのは、見てくれる人たちが楽しんでくれるから。そのことが僕自身の楽しさにつながって、もっとがんばろうという気持ちになります」また現役の理科教師でもあるだけに「理科好きな子どもを増やしたい」という情熱もあるそうです。思いを同じくする全国の理科教師たちの活動に励まされることも多いとのこと。
「僕たちが行っている活動は、理科離れを防ぐのではなく、理科好きを増やすためのものです。ショーを楽しく思えるなら、きっと理科の授業も楽しんでくれるんじゃないでしょうか」
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最近は、授業の中にもサイエンスショーの要素を取り入れることがあるそうで、ひたすら教科書を読むだけの授業よりも数段面白そうです。
「僕が伝えたい科学の基礎を、すべてサイエンスショーにしたいです。サイエンスショーにはそれぐらいの魅力と可能性があると思っています」サイエンスショーでは、タレント並のエンターテイナーぶりを見せ、教壇ではユニークな授業に努める月僧先生。これからも科学の面白さ、楽しさを多くの子どもたちに伝えていってほしいものです。
月僧秀弥(げっそう・ひでや)
1968年生まれ。福井県坂井市立春江中学校教諭。科学部顧問。
科学の祭典や全国の科学館、科学イベントで、サイエンスショーや科学実験教室の講師を務める。
オンライン自然科学教育ネットワーク(ONSEN)、サイエンスEネット所属。
「サイエンス・ラボ」(月僧先生のHP)