半分植物で、半分動物の謎の生物発見!
「ハテナ」と名付けられた不思議な生物が、教えてくれるのは、進化の秘密の扉?
中学校の理科の時間を思いだしてください。動物と植物を判別する条件として、植物は体内に葉緑体を持ち光合成を行うと習ったはずです。一方動物の方は、光合成ができないので外部から栄養素を取り込む必要があるわけです。ところが最近、動物と植物の両方の特徴を持った不思議な微生物が発見され話題を呼んでいます。
筑波大学の井上勲教授と岡本典子研究員が和歌山県の海岸で採取した海水の中に、不思議な生物が発見されました。大きさは100分の3ミリ程度で2本の鞭毛(べんもう)があります。この生物、体の中の緑色になっている部分に葉緑体を持ち、光合成を行っているようなのです。動物にも関わらず植物のように振舞うこの生物は、「ハテナ」と名付けられました。
このハテナですが、単細胞生物ですので細胞分裂で増えていくのですが、そのプロセスがとんでもなく「ハテナ???」なのです。通常の分裂では、ひとつの個体からふたつの同じ個体に分かれるはずなのですが、ハテナの場合は、体内に葉緑体を持つ「植物タイプ」と、葉緑体を持たない「動物タイプ」に分離するのです。しかも動物タイプの方は、「口」から特定の藻類を取り込んで一体化することで元の植物タイプとなり、再び光合成を行うようになります。そしてまた分裂する時は、植物タイプと動物タイプに分かれて増えていく……何とも不思議な一生を送るハテナです。
さらにおもしろいのは、動物タイプが一体化できる藻類は何でもいいというわけではなく、ある特定の藻類でないと、そのまま消化してしまうという点です。その藻類が「何か」までは現段階では特定できていないようです。
最近の研究では、植物は進化の最初から「植物」だったわけではなく、進化のどこかで光合成が可能な葉緑体と一体化、さらに共生関係になることで「植物になった」と考えられています。このプロセスは、上に述べたハテナの生態と非常に似ていませんか? つまりハテナをもっと深く研究することで、この地球上に植物がどのように誕生していったかを探る鍵が見つかるかもしれないのです。井上教授らの研究は、科学雑誌「サイエンス」(2005年10月14日号)で発表され、今後の発展が期待されます。
ハテナとしか名付けようのない生物が新たに発見される……それは地球上には、まだまだたくさんの謎が隠されている証でもあります。今後数十年の間に、かつて理科の時間に習った内容が全く書き換えられてしまう日が来るかもしれませんが、それはそれで面白いとは思わないでしょうか?
「ハテナ」はここで。