2016-3-1 UPDATE

動物たちが見ている世界は何色?

犬や猫の視力はどのくらい? 色の区別は?
人間が普通に見ているこの世界は、他の動物たちにはどう見えているのでしょう。

私たち人間は、2つの眼で自分たちの周囲に広がる世界を見ています。フルカラーの立体視が可能であることが大きな特徴です。では身近にいる犬や猫たち、さらに野生の動物たちは世界をどのように見ているのか疑問に思ったことはないでしょうか? ご自分のペットの行動や仕草をよく観察してみると、「本当にこっちに気付いている?」と思うようなことがあります。動物たちは世界をどのようにとらえているのでしょうか。

まずは犬の例を見てみましょう。実は犬は近眼で、視力0.3ぐらいのようです。色の識別も人間ほどではなく、モノクロかつ、ややピンボケで世界を見ていると考えられています(ただ最近の研究では、若干ですが色を感じることができるという説もあります)。一方で動態視力に優れていて、素早く動くものをとらえる能力は人間を越えていますし、視野も220〜290度と広く、危険を察知する能力に優れています(ちなみに人間の視野は180度くらい)。

次に猫ですが、暗闇でも抜群の視力を持つことはよく知られています。猫の眼を調べてみると、光をとらえる細胞の数が人間よりも多く、さらに網膜の後ろにある「タペタム」という反射鏡のような器官があり、光を再利用する仕組みになっています。視力そのものは人間よりも劣っていて、「青」と「緑」を判別できるようですが、「赤」は無理なようです。

一方、鳥は人間よりも遥かに優れた視力を持っています。ワシやタカなどは、人間の8〜10倍の視力を持つと言われ、高空から地上の小動物を発見すると急降下してきます。暗い場所で視力が落ちる「夜盲症」を「鳥目」と呼ぶことがありますが、これは現実とは掛け離れた表現です。鳥類は夜に視力が落ちることはなく、実際夜に長距離を飛ぶ渡り鳥もいます。

以上、視力の面から動物たちが周囲の世界をどうとらえているかを見てきましたが、動物たちは、人間よりも優れた嗅覚、聴覚などを持っており、それらを総合的に駆使していることを忘れてはいけません。自分の飼主を匂いで区別できるのならば、近眼でも困ることはありません。遠くのものが見えなくても、音で危険を察知できてしまうのが動物たちの能力です。動物たちが五感をフルに使って、周囲の情報を得ているのに対して、人間は外部からの情報のうち80%を視覚に頼っていると言われます。「今日からは匂いで相手を識別できるようになりましょう」と言うつもりはありませんが、今一度自分が持っている感覚に目を向けてみる必要があるのではないでしょうか。